認知症ケアチーム
認知症と向き合い、“いつまでも自分らしく”を支えるチームです
救急総合診療科 松瀬 房子
認知症とは
みなさんの身近に認知症の方はおられますか?高齢化の進行とともに、認知症の方も増えており、2030年の推計では500万人を超えると言われています。当院に入院する患者さんの高齢化もまた進んでおり、75歳以上の方は4割を超えます(2023年度実績)。
認知症の方やご高齢の方は、一時的に意識の状態が不安定になったり(せん妄)、入院していることが分からず帰ろうとしたりするなど、混乱した状態になることがあります。
認知症ケアチームとは
そんな方々にも安心して治療を受けていただけるよう、2名の認知症看護認定看護師を中心に、薬剤師、作業療法士(リハビリ)、医療ソーシャルワーカー、総合内科医(認知症サポート医)で構成される認知症ケアチームが活動しています。
週1回、カルテ回診を中心としたラウンドをチームで行います。看護師は、入院中の過ごし方や睡眠、食事、排便の状況などを評価します。総合内科医は、治療の見通しや採血の異常等を評価し、薬剤師は、転倒・転落・せん妄のリスクとなりうる睡眠薬の使用や、ポリファーマシー(多数の薬の内服)などの評価を行います。作業療法士は、動作能力(ADL)や認知能力の評価、視力や聴力などその方に合わせた適切なコミュニケーションの取り方について評価します。このように患者さんを包括的に評価したうえで、その患者さんに必要な対応を個別に提案していきます。
また、せん妄を疑う患者さんについては、精神科医がチームに加わり、「せん妄(リエゾン)ラウンド」として、認知症ケアチームとは別に、週1回の回診を行っています。各ラウンドともに毎年200件前後の回診を行っています。
認知症ケアチームの実績とこれから
また、その他のチームの活動としては、院内で不眠時やせん妄時に処方される推奨指示薬セットの作成や、職員向けの勉強会を定期的に開催しています。これらの取り組みを経て、この5年でリスクのある睡眠薬の使用は約半分に減りました。
近年は、朝から1万ルクスの光を浴びることで睡眠覚醒のホルモンを調整する「高照度光療法」の治療器を取り入れ、より副作用の少ない治療を工夫しています。また、認知症マフ※や見当識ボード(日付や入院理由などを明記したボード)の導入など、日々のラウンドから課題を見つけ、新たな取り組みにつなげています。
今後も、患者さんが安心して療養できる環境づくりに取り組んでいきます。
※認知症マフとは、筒状のニット小物です。中に手を通すなどしてマフに触れることで、安心感や落ち着きを得られると言われています。特に認知症の方に有効とされています。

こちらの記事は、患者さん向けの広報誌「季刊誌みみはらvol.32」に掲載しております。総合案内・各病棟・サポートセンター(1階)などで配架していますので、ご自由にお持ち帰りください。広報誌のアーカイブは コチラ からもご覧いただけます。

