いま全国の医療機関の経営が深刻な事態に!!
民医連で「地域医療の崩壊をくい止める緊急行動」として医療機関の収入源である診療報酬の引き上げと財政支援を求める国民署名に取り組んでいます。来年春は診療報酬の見直しの年です。この見直し議論が佳境を迎える来年1月末までの緊急の取り組みとして、地域医療を守り、暮らしの安心を守るための取り組みです。
医療機関の倒産件数が過去最多に
NHK・EVT特集「断らない病院のリアル」、NHKスペシャル「追い詰められた病院で…」、クローズアップ現代「まさか都市も赤字!?病院経営の危機」、TBS・報道1930「大学病院がなくなる日…」、「関口宏のこの先どうなる?〜病院大倒産時代」ーー今年6月から8月にかけて放映されたテレビ番組です。医療機関の経営問題に焦点を当て、経営難で病院がなくなる深刻な実態を伝えています。
実際にいま全国でたくさんの医療機関が経営危機に瀕しています。これは規模の大小、民間か公立か、地方か都市部に関係なく直面している問題です。昨年1年間に倒産した医療機関の数は2000年以降で最多に上りました。そして今年の前半はさらにそれを上回るペースで倒産しています。本当に地域で「病院が潰れてなくなる」事態が広がっています。6つの病院団体が昨年行なった経営調査では、医療機関の7割が赤字経営に陥っています。そしてより深刻なのが最も高度先端医療を担う国立大学の附属病院で、実に8割が赤字です。
なぜ、こんなに医療機関が赤字になり倒産をするのか?医療機関の収入の大半を占める診療報酬=「医療の公定価格」が長年引き上げられていないからです。そのため、実は以前から医療機関の経営は余裕がありませんでした。そこに昨今の物価上昇、賃上げによるコスト増加が重なり、いよいよ耐えられなくなっています。診療報酬は国が決めるため、費用が増えても医療機関は「勝手」に値上げはできません。
低すぎる診療報酬…病院は常時“満員電車”でないと経営が持たない
経営の指標に「損益分岐点」というものがあります。客数や販売数量などが“この水準を上回れば赤字にはならない分れ目”の水準です。病院の損益分岐点の代表的な指標は入院ベッド(病床)の埋まり具合です。損益分岐点になる病床の埋まり具合は約90%と言われています。ではこの値が「普通」かと言うと、そんなことはなく、異常に高い値です。
他の産業の損益分岐点を見てみると、例えば賃貸マンション業は約80%、ホテル業は60〜70%と言われています。つまり、持っている部屋の7割ほどが埋まれば赤字にはならないということです。また、鉄道業では乗車率60%が損益分岐点と言われています。一方病院は、診療報酬があまりに低すぎるため、持っている病床の9割方が埋まった状態を維持できないと赤字になり、経営が行き詰まってしまうのです。
「病床を90%埋めたらいいじゃん」と思われるかもしれません。しかし皆さん、4年前の春から夏にかけてのことを思い出してください。新型コロナ感染症の流行がピークを迎え、全国でまったく病床が足らず、救急車の行き先もなくなり、長時間自宅や救急車に留め置かれ、亡くなった方もいました。トリアージと呼んで「命の選別」も起きました。こんな事態に陥ったのも、そもそも病院が普段から病床を満々に埋めておかないと経営が成り立たない、言わば“24時間365日、満員電車の状態”が求められるためです。
安心して暮らし続けられるために、診療報酬を引上げを求める国民署名へ協力を
そんななかで自民、公明、維新の会が病床を万床減らすとの合意をしました。これは絶対に許してはいけません。しかし、あまりに低すぎる今の診療報酬のままでは、11万床削減をせずとも地域から病院がなくなり、必要な入院ができない、地域の方々が安心して暮らせない事態になりかねません。
民医連が呼びかける署名は、こうした事態を引き起こさせないための緊急の行動です。地域医療を守り、暮らしの安心を守るために、国民署名への協力をお願いします。
社会医療法人同仁会 専務理事 森高志

こちらの記事は、社会医療法人同仁会が発行している「同仁会報 第154号」に掲載しております。
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