自民党と日本維新の会は、医療機関で処方される「OTC類似薬(市販薬と成分が同じ、または似ている薬)」に対し、薬剤費の25%を窓口で追加自己負担させ、残りの75%に保険適用(1~3割)するという方針を決定しました。湿布や解熱薬、抗アレルギー薬、胃腸薬など77成分、およそ1100品目が対象になるようです。例えば、自己負担3割の患者さんがアレルギー性鼻炎のため抗アレルギー薬のフェキソフェナジン錠を2ヶ月分処方される場合について計算してみました。ジェネリックのフェキソフェナジン錠の薬価は通常用量の60㎎錠でだいたい20円くらいの様です。朝夕内服ですから60日分で2400円になります。これまで自己負担金額は3割の720円でした。これが1140円になります。2ヶ月分で420円の負担増、1年間で2520円・・・(実は私も、フェキソフェナジン錠をずっと内服している患者の一人です)。「これまでよりも、お薬代がかさむ」と言う心理的抑制効果は大きいと思います。この追加自己負担割合は今後さらに増えたり、品目が拡大されたりする可能性があります。
最も懸念されるのは、経済的な理由で受診をためらう「受診控え」です。本人は「ただの風邪」や「軽い湿疹」と思っていても、実際には重大な疾患の初期症状である場合があります。また医師の診察は、単に薬を出すだけでなく「重大な病気が隠れていないか」を確認する場です。自己負担増により、このスクリーニング機能が損なわれ、結果として発見が遅れて最終的な医療費が高騰する(重症化による入院など)という本末転倒な結果を招く恐れがあります。
OTC類似薬には、長期にわたり服用が必要な基礎的な薬が多く含まれます。1回の負担増は数百円でも、毎月、あるいは複数の薬を併用している患者にとっては、年間で数万円の負担増になりかねません。特に、低所得層や年金生活者にとって、この「25%の上乗せ」は治療の継続を断念させる死活問題となります。
また、この方針は、日本の医療の根幹である「必要な医療を、誰もが平等に、安価に受けられる」という皆保険の原則を揺るがすものです。保険診療の中に、実質的な「自費(上乗せ負担)」を持ち込む手法は、将来的に他の薬剤や検査にも拡大される「突破口」になるのではないかという危惧があります。政府が期待するほどの「医療費抑制効果」が得られない可能性もあります。医師が患者の負担を考慮して、OTC類似薬ではない(上乗せ負担のない)より高額な医療用専用薬に処方を変更する場合、結果として国全体の医療費はかえって増大するという逆転現象が予想されます。薬剤師や事務スタッフが、患者さんに対して複雑な「上乗せ負担」の仕組みを説明せねばならず、現場の負担増と窓口でのクレーム増加も容易に想像されます。
「必要な医療は保険で」。それが社会不安を解消し、国民が安心して暮らせる日本を作ってゆくための基礎だと考えます。
「私はOTC類似薬の25%自己負担上乗せに反対です」-田端DRコラム2025年12月-
