今回は、実際に行われた多職種カンファレンス(※)を通して、患者さんと一緒に「自分らしい暮らし」を考えたエピソードをご紹介します。
※多職種カンファレンスとは?
医療や介護では、患者さんが安心して自分らしい生活を続けられるように、医師だけでなく、看護師やリハビリスタッフ、ケアマネージャー、薬剤師、訪問スタッフなど、さまざまな専門職が関わっています。
それぞれの専門職が一つのチームとなり、患者さんやご家族の思いや希望を共有しながら、「これからどのような生活を支えていくか」を一緒に話し合う場です。
病気や治療のことだけでなく、「自宅で過ごしたい」「好きなことを続けたい」「できるだけ自分らしく暮らしたい」といった患者さん自身の願いも大切にし、一人ひとりに合った支援を考えていきます。
患者さんと一緒につくる、多職種カンファレンス
~「自分らしく暮らしたい」を支えるために~
内科 看護師 長川堂 晶子
高砂クリニックには様々な患者さんが来られます。
中には、車椅子や押し車を使用しながら来院され、道中危なくないのか、今後も通院が可能なのか、自宅でどんな生活を送っておられるのか、心配になる患者さんもおられます。
以前に、処置室で採血をしようと名前を呼ぶと一人で立ち上がれず、看護師が介助しやっと立ち上がれた患者さんと出会いました。
尋ねると患者さんは一人で自分の運転で来られ、要支援の区分変更中で、在宅の支援が入っていないことがわかりました。
また、座ると立ち上がれないため、待ち時間がないように診察の後一度家に帰り、夜にもう一度来て高砂薬局で薬を貰っている事がわかりました。
すぐにスタッフ間で共有し、どうしたら良いか話し合いました。
まずは薬剤師から薬の配達が出来ることを伝え、要介護を申請し認定されると即座に配達に切り替えてもらいました。
自宅まで訪問し運転する環境を確認し、愛犬との生活を楽しまれている様子も知ることができました。
順調に在宅でのサービスが整った頃、お話を聞くと、できるだけ入院はせず、自宅で愛犬と過ごす時間を大切にしたい。との思いを話してくれました。
その思いを実現するために私達に出来ることは何なのか話し合う時間を持ちたいと思い、患者さん、ケアマネージャー、看護師、介護ヘルパー、薬剤師、運動トレーナーで多職種カンファレンスを行いました。
カンファレンスでは、まずは患者さんのこれまでの人生、生きる上で大切にしている事、幸せだと感じる時、治療ケアのゴールとなる目安、とても心地良いと感じる時、よく生きるとはどういう事と考えているか教えて頂きました。
病気の事だけでは無く、患者さん自身を知る事はケアを行う上でとても大切だからです。
在宅の生活では、ゴミ出しの時に転倒し立ち上がれなくなり、通りすがりの方に起こしてもらった事があることや、ヘルパーさんが行う入浴介助の時に、いったん座ると湯船から上がれなくなるため、何度も相談を重ね、せーのの声かけでいったんお尻を浮かせ、ヘルパーさんがその下に椅子をすべりこませ湯船から上がることが出来るようになった事等共有されました。患者さんからはヘルパーさんに感謝の気持ちを伝えられる場面もありました。
そして、運動トレーナーから筋力アップのために在宅でのリハビリを導入する事の提案や、看護師から傷が出来た時の入浴後の処置方法のアドバイスを行いました。
主治医からは、感染症にかからないように気を付けることと、飲酒を控えるようにとのメッセージがありました。
カンファレンス後、患者さんから
「介護ヘルパーさんと連携がうまくいくようになった。スタッフ間で連携して頂いて安心が持てるようになった。」
ヘルパーからは
「初めての取り組みでキャリアアップに繋がった。何かあった時の連携もスムーズに行えるようになった。」と感想を頂きました。
今回多職種カンファレンスを行い、患者さんとスタッフがいつもは口にしない疑問や感謝の気持ちを伝えあう場となりました。
そして、困った時はいつでも相談しあえる場があることを実感することが出来ました。
患者さんは今では自力で立ち上がる事も出来る程回復されていますが、もし何か起こっても周囲のスタッフはすぐに連携できる体制が整っています。
少し話しかけにくかった患者さんと笑顔で交流できるようになり、患者さんがお酒を辞めてくれた事は私にとっても大きな喜びでした。
このような取り組みは、診療報酬上の評価はないため、医療機関の「善意」に任されているのが現状です。それでもみみはら高砂クリニックでは、今後も「一人で戦っているのでは無い」と参加者が実感できるカンファレンスを開催していきたいと思っています。また、このような取り組みを続けられる制度を求めていくことも必要だと感じています。
