外来に通院されている皆さんの多くは、定期的に血液検査を受けておられると思います。どの患者さんでも共通している項目は、血算(赤血球や白血球の数)、血糖値、肝機能、腎機能、脂質(コレステロールや中性脂肪)、電解質(ナトリウムやカリウム)、尿酸値、炎症反応、アルブミン値などでしょうか。これだけの項目を検査すると、その患者さんの全体の状況がまあまあ把握出来ます。それに加えて、その患者さんが抱えている疾患に特徴的な項目が加わります。患者さんから「こんなに何本も血を取るのー!」と言われるのも無理はありません。
大抵の患者さんは、「血液検査を行いますよ」とお声かけすると「了解です」とすぐにお答えいただきます。ですが、中にはなかなか血液検査にご同意頂けない患者さんもいらっしゃいます。「いや、特に今調子は悪くないから」、「薬で血圧は安定しているのだから、採血は要らないです」、「そんなに沢山の項目は要りません、糖尿病(あるいは自分の病気の項目)だけ調べて下さい」などなど。では、医師は何を目的として血液検査を行なっているのでしょうか?
定期的に通院されている患者さんの多くは、何らかの慢性疾患で投薬をずっと受けている方です。頻度は高くないですが、薬には副作用があります(薬剤によっては比較的高い頻度で起こる副作用もあります)。下痢や気分不良、湿疹など症状として分かる副作用もありますが、肝機能障害、腎機能障害、電解質異常、血球減少などは、血液検査を行わなければ分かりません。また薬をずっと投与して行く上では、肝機能と腎機能を定期的に評価し続けなければなりません。何故なら、薬は肝臓、腎臓、もしくはその両方で分解されて行くからです。腎臓で分解される薬剤を投与していて、その患者さんの腎機能が知らない間に低下していたとしたら・・・。その薬は患者さんにとって多すぎる量になり、時には生命に関わる副作用につながるのです。
また、治療目標を達成出来ているのかの判定にも、血液検査が不可欠です。例えば、LDLコレステロール値(動脈硬化を起こして行く、いわゆる悪玉コレステロール)は、その患者さんが持っている他の疾患や年齢、性別、血圧値、喫煙の有無などで、細かく「どのくらいまで下げるべきなのか」がガイドラインで定められています。大抵の疾患にはそれに応じたガイドラインがあり、そこに記してある治療目標値を目指して、医師は薬物の調整を行うのです。
体調不良時の血液検査は、上記とは少し目的が異なります。現在起こっている体調不良が、ただの風邪の様なものなのか、それとも積極的に治療介入を行うべき疾患なのかを見極めるのが目的です。特にご高齢の患者さんは症状が表に現れにくく、血液検査の結果を見てその悪さにびっくりする様な事もあります。体調不良で受診された患者さんに「今から血液検査をします」と説明すると、「いや先月に血液検査をしたばかりです」とおっしゃる方がいます。今その時に、どの様な急な変化が起こっているのかを調べるための血液検査ですから、少し前の検査結果では役に立たないのです。
皆さん、是非必要な血液検査は積極的に受けて下さいね。