「日本が国として戦争の準備を着々と行っている」と感じることが多くなってきました。皆さんはご存じでしょうか?先日、厚生労働省から都道府県あてに「国民保護救護班養成研修」の受講者募集の事務連絡が出されました。国民保護法などに基づき、武力攻撃事態や武力攻撃予測事態に際して医療を提供するチームとして、厚労省が「国民保護救護班」を編成するというものです。令和8年11月から翌年3月にかけて、東京・大阪・福岡で計5回、各回60名の研修が予定されています。
プログラムの内容は「一般の医療従事者が戦傷対応を行うことができるようにする」ものです。2日間の日程には「武力攻撃事態等について」「搬送調整」「診療実務」などの机上演習が並びます。対象は医師・看護師に加え事務職員を含む医療従事者で、本人、所属医療機関、国の機関の三者で派遣に関する覚書を結ぶ意思のある人とされています。日本医師会の通知も、単なる知識の習得ではなく、救護班の一員として活動する意思のある人が対象だと念を押しています。これは災害医療の勉強会ではなく、有事に派遣される人員の養成なのです。
私は医師として、人の命を救うことを使命に歩んできました。地震や水害の被災地に医療者が駆けつけるのは、命を守るためです。けれども、戦傷者への対応を一般の医療従事者が担う前提で準備が進んでいくことには、強い違和感を覚えます。戦争は医療の力では防ぎきれない、最大の人災です。医療者が「備える」ことが、戦争を「起こりうるもの」として社会に受け入れさせる一歩にならないか、危惧しています。
もう一つ怖いのは、こうしたことが国民の知らない間に着々と進んでいることです。この事務連絡を目にした方は、ほとんどおられないでしょう。患者さんも、地域の皆さんも、病院で働く職員の多くも、まだ知らないのではないでしょうか。本来であれば、広く国民的な議論を経て決めるべき事柄です。医療者の使命は、誰であれ、差別なく命を救うことです。だからこそ私は、命を奪う戦争を起こさせないことにこそ力を尽くしたいと思います。まずは、こうした事実を知ること。そして一人ひとりが考え、声を上げていくことが大切だと思います。
