近年、認知症とウイルス感染症の関係が注目を集めています。特に新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、感染症が私たちの脳や健康に与える影響について、多くの研究が進められています。認知症は、記憶や判断力など脳の働きが低下し、日常生活に支障をきたす病気です。加齢とともに発症リスクが高まりますが、最近の研究では、ウイルス感染症が認知症の発症に影響を与える可能性が指摘されています。ウイルスに感染すると、体内で炎症が起こり、それが脳にも波及して神経細胞がダメージを受けることがあると考えられているのです。
新型コロナウイルス感染症に罹患した後、認知症の発症リスクが高まるというデータがあります。海外の大規模な研究によると、新型コロナウイルス感染後1年以内に認知症を発症するリスクが、感染していない人に比べて有意に高いことが分かっています。特に高齢者や基礎疾患を持つ方では、その傾向が強くみられました。一方で、新型コロナウイルスワクチンを接種した人の方が、感染後の認知症発症率が低いという報告もあります。ワクチンを接種することで重症化や長期的な後遺症だけでなく、脳への影響も抑えられる可能性が示されています。ワクチン接種は自分自身を守るだけでなく、将来の健康リスクも減らす重要な手段だと言えるでしょう。
さらに最近では、帯状疱疹ワクチンの接種が認知症の発症リスクを下げるというデータも発表されています。帯状疱疹は、水ぼうそうウイルスが再活性化して発症する病気ですが、これに対するワクチンを接種した人は、接種していない人に比べて認知症の発症率が低いことが報告されています。ウイルス感染を防ぐことで、脳の炎症やダメージを抑える効果が期待できると考えられています。
多くの方が毎年のように接種されているインフルエンザワクチンについても同様の研究結果が出ています。ワクチン接種は、私たち一人ひとりが元気に長く生活できるだけでなく、家族や社会全体の負担も軽減することができます。また、集団でワクチン接種を進めることで、感染の拡大を抑え、みんなが安心して暮らせる社会づくりにもつながります。
これまでの研究から、ウイルス感染症と認知症には関係があり、ワクチン接種がそのリスクを下げることが分かってきました。今後も新しいデータや知見が増えていくことが期待されますが、現時点でもワクチン接種が私たちの健康を守る大きな役割を果たしていることは間違いありません。耳原鳳クリニックでは、様々な種類のワクチン接種に積極的に取り組んでいます。皆さんも、ご自身とご家族の未来のために、ワクチン接種について是非前向きに考えて頂くよう、お願いいたします。
「認知症とウイルス感染症の関係〜ワクチン接種の重要性を考える〜」 田端Drコラム2025年11月
