私は耳原総合病院を中心とする医療と介護の複合事業体である、社会医療法人同仁会の理事長を務めています(耳原鳳クリニックの所長も兼務しています)。「同仁会」と言ってもピンとこない方が少なくありません。「みみはら」の呼称が、地域には広く根付いています。私たちは「お金のあるなしで医療を受ける権利が妨げられる事があってはならない」と、開設当初から「無差別・平等」を理念として来ました。同仁会の「同仁」は「一視同仁(=すべての人を分け隔てなく平等に愛すること)」の言葉から取ったものです。
この理念に基づき、耳原総合病院は開設以来、室料差額(いわゆる差額ベッド代)を徴収していません。室料差額を徴収しない病院運営と言うものは非常に大変です。現在、ほとんどの病院では「個室入院で1日1万円」程度の室料差額を患者さんから徴収しています。これは「患者さんが希望した場合」に患者さんの同意を得て徴収されるもので、「病状により個室入院が必要な場合には徴収できない」事になっていますが、その辺は結構あいまいにされており、室料差額に関するトラブルをよく耳にします。病院団体が行った病院経営調査報告では、病院収入の約1パーセントがこの室料差額になっています(耳原総合病院に当てはめると年間約1億円にもなります)。皆さんも耳にされていると思いますが、低すぎる診療報酬のために日本の医療機関経営は全国的に危機的な状況になっており、この室料差額料をどの病院も値上げしています(2023年に比べて2024年は平均して約9パーセントの値上げ)。誰もがプライバシーの保たれた静かな個室で病気療養したいものです。政府は医療機関経営の困難さを、患者さんから保険外の徴収で補う方針を取ってきましたが、私たちはそれには明確に反対します。大変ではありますが、「みみはら」が何のために、誰のために存在するのかを大切にして、耳原総合病院はこれからもずっと室料差額を徴収しない運営を貫き通します。
また、私たちは法人として無料低額診療事業と言うものを行っています。これは生計困難な方に対して、通常は1~3割お支払いいただいている窓口自己負担金を無料にする制度です。この制度を導入している法人により基準は異なりますが、私たちの法人は世帯収入が生活保護基準の150パーセント以下の方を対象にしています。医療費自己負担のために必要な医療が受けられない患者さんにとっての、最後の砦のような制度です。当法人が頂かなかった自己負担金は、特にどこかから補填されるわけではありません。コロナ前の2019年度までは、減免総額は年間500万円程度でした。それがコロナ以降、貧困が広がったためか年間1000万円を超えるようになり、2024年度はとうとう2000万円を超えました。それだけ医療費の窓口負担が苦しい方が増えていると言うことです。無料低額診療事業も、「みみはら」の理念を実現する大切な事業として、継続してゆきたいと思います。
「みみはら」は社会的に意義のある事業を行っていると自負しています。2025年4月に、私たちは鳳地区に耳原鳳クリニックを新築移転し、大仙西地区に「コミュニティ棟みみっぱ」と「有料老人ホームひまわりの家・大仙西」を建設しました。建設のための資金として、寄付と「みみはら協同基金」へのご協力をお願いしています。私たちの無差別・平等の事業をぜひ応援してください。