コロナウイルスによる新型肺炎の流行が続いています。みんな不安に思っています。
新聞やテレビは「発熱や咳がみられる場合には自宅安静を」と言っています。それは、「発熱や咳がみられるときに無理に外出することにより自分自身の状態が悪くなるばかりでなく、周りの方に感染を広げるリスクを高めることになる」からです。発熱や咳があっても安易に医療機関にかからずに4日間は自宅で様子をみてくださいとしています。
流行期に、発熱や咳がある患者さん、みんなが医療機関に殺到すると、患者さんが集まりすぎて医療機関の機能がパンクする可能性があります。また医療機関内で病気をうつしたり、うつされたりすることも考えられます。
だから発熱や咳があっても、慌てて医者にかからずに4日間は家で様子を見てくださいと言うのです。これは正論です。皆さんも、これに沿って行動してください。
しかし私は日々診察している患者さんのことを思うと、本当にこれでだけ大丈夫かと心配です。
たしかに、普段健康で身の回りのことも自分ででき、何かあった時に助けてくれる家族が身近にいる人は、風邪症状があっても4日間自宅で寝ていても大丈夫でしょう。
でも、今は独居の方が増えています。要介護・要支援の方が増えています。デイサービスを利用して、日常生活を送られている方が少なくないです。熱や咳があると、当然、デイサービスの利用も断られます。医者にもデイサービスにも行けなくなります。そんな方が自宅で安静にして療養したら、どんな状況になるのでしょうか。必要な食事や水分はとれるのでしょうか。病状が悪化したとき、時期を失せずに医者にかかることができるのでしょうか。心配です。
感染を広げないために、「発熱・咳がみられる場合には自宅安静」というのは正論です。しかし、これは「感染の可能性があるクルーズ船の乗客は、下船をさせずに、船内隔離」したことと同じです。正しいのは正しいですが、船の外にいる強者の正論でした。船に留め置かれてた乗客・乗員の感染の危険性・健康・心情への配慮が欠けていました。自宅で療養する人に対しても思いやりのあるサポートが必要です。ぜひお力になりたいと思います。
息苦しい、食事がとれないという症状がでれば、クリニックに遠慮せずに電話(℡072-275-0801)してください。自宅安静をしているときに、心配事があれば一人で思い悩まずに、相談してください。