コラム

● 池田Drのちょこっと一言

飲みたい気持ちを抑え飲酒量を減らす薬が発売されています ―池田Drコラム2020年2月―

 アルコール依存症患者における飲酒量を低減する薬、ナルメフェン(商品名セリンクロ)が昨年3月より発売されています。この薬は飲酒したいという欲求を抑え、飲酒量を減らす作用があります。アルコール依存症の治療の最終目標は、原則、断酒の達成とその継続です。これまでのアルコール依存症の薬はアルコールを飲むと吐き気や動悸などの不愉快な症状が出る嫌酒薬で、治療を継続することに困難で中断することがあります。この薬の出現でアルコール依存症の治療の導入が容易になると期待されています。

 アルコール依存症はどんな病気でしょうか。アルコールを大量長期にわたり服用して、飲酒したいという欲求が強くなり、飲酒行動をコントロールすることが難しくなる病気です。病気(肝臓病、糖尿病、高血圧など)の治療のために飲酒をしてはいけないと医師から言われているのに飲酒がやめれなかったり、飲んではいけないときにも我慢ができなかったり、飲みだすと飲酒が止まらなくなり健康飲酒の量を超えてしまい、身体も生活も人間関係も壊してしまう病気です。

 健康飲酒の量は一日あたりビールは中びん1本(500ml)、日本酒は1合(180ml)、ウイスキーはダブル1杯(60ml)、焼酎0.6合(110ml)です。自分は飲まないときは、飲まないでいけるという人でも、飲みだすとつい大量に飲んでしまったり、飲んで記憶がなくなったり、トラブルを起こしたりすればアルコール依存症です。

 ナルメフェンはアルコール依存症と診断がつき、一日平均ビール中びん3本以上もしくは日本酒3合以上飲んでいる人に適応があります。飲酒の1~2時間前に服用するとお酒を飲みたいという欲望が下がり飲酒量が減る効果があるとされています。アルコール依存症の治療の中心はアルコールの害についての学習や依存症になった考え方生き方を修正していく心理社会的治療です。薬を飲むだけではなく心理社会治療を合わせて受けることになります。それがなければ服薬の継続も困難です。

 ナルメフェンによる治療はどこで受けることができるでしょうか。アルコール依存症の治療の専門的研修を受けた医師がいる医療機関で受けることができます。鳳クリニックでは処方することができません。
アルコール依存症の治療を希望される人は
西保健センター(鳳クリニック向い電話072-271-2012)
堺こころの健康センター(電話072-245-9192)に問い合わせてください。

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