平和は当たり前ではない ~広島・呉で考えた3日間
みみはら高砂クリニック 看護師 大平 久里子
この夏、私は広島で開催された「原水爆禁止2026年世界大会・広島」に参加しました。

今年は、広島・長崎への原爆投下から81年。大会では「被爆者とともに核兵器のない平和で公正な世界を~人類と地球の未来のために~」をテーマに、核兵器のない世界を目指す国内外の取組みや、被爆者の体験、平和への思いについて学びました。
1日目の開会総会では、核兵器廃絶に向けて世界各地で活動する人々の報告や、被爆者からのメッセージが紹介されました。
被爆者の平均年齢は86歳を超え、直接その体験を語ることができる方が少なくなっています。だからこそ、実際に被爆した方の声を聞き、その記憶を次の世代へ受け継いでいくことには大きな意味があります。
総会の後には、平和記念公園にある「原爆の子の像」を訪れ、折り鶴を奉納しました。
81年前の広島を歩いて
今回の広島滞在では、被爆樹木を訪ねて歩きました。
被爆樹木とは、原爆による被害を受けながらも、その後も生き続け、現在まで命をつないでいる樹木のことです。爆心地から比較的近い場所にありながら、焼け焦げた幹から再び芽を出し、現在も懸命に成長を続けている木々があります。
その姿を実際に目の前にすると、あの日を超えて生き続けてきた生命に「いのちの尊さ」を感じずにはいられません。
広島市は爆心地から半径約2㎞は全壊全焼、焼け野原になったと知り、爆心地周辺から広島駅まで約2.5kmを歩いてみました。
今では緑が広がり、多くの人が行き交う街並みになっています。しかし、そこには81年前、原爆によって多くの命が奪われた歴史があります。
「今ある平和な日常は、当たり前に存在しているものではない」
歩きながら、この81年間の広島に思いを馳せ、多くの人の努力や過去の経験の上に成り立っている目の前の風景を胸に刻みました。
呉で見た「今」の平和
2日目には「呉基地調査行動」に参加しました。
呉市にある「歴史の見える丘」からは、呉で造られた戦艦「大和」を建造したドックの上屋を眺め、大和の主砲徹甲弾や造船船渠記念碑や正岡子規の句碑をめぐりました。
「潜水隊前」では海上自衛隊の潜水艦と、空母化に向けた改修が行われた護衛艦「かが」が停泊していました。
実際にその大きさを目にすることで、呉が現在も大きな軍事拠点であることを実感します。
また、日本製鉄呉地区の工場跡地については、約130ヘクタールの広大な土地を防衛省が「多機能複合防衛拠点」として活用する計画が進められています。
世界情勢が緊迫するなか、国を守るための備えが必要であることは理解できます。
しかし一方で、「軍事利用を進めることが平和につながるのだろうか」「地域の未来はどのような形が望ましいのか」と複雑な思いを抱きました。
広島で「核兵器によって失われた命と平和」を学んだ一方で、呉では「現在の日本で進められている防衛・軍事の在り方」を目の当たりにしました。
過去の戦争を知るだけではなく、これからの日本の平和をどうつくっていくのかを、自分自身が考えることも大切なのだと感じました。
医療の立場から考える平和
3日目の閉会総会では、核兵器廃絶に向けた世界の動きや、市民が果たす役割について学びました。

その中で心に残ったのが、日本女医会による「医師として平和を考える」という視点です。
核兵器が使われれば、医療そのものが機能しなくなる。核兵器による被害に対応できる医療は存在しない。だからこそ、核兵器による被害をなくすためには、核兵器そのものをなくすことが必要だというスピーチでした。
看護師として従事する私にとって、平和と医療は決して別のものではない。
「いのちを守ること」と「平和を守ること」はつながっているのだと感じました。
人々が安心して暮らし、医療を必要とする人に医療を届けられる社会を守ることも、命を守ことにつながるのだと思います。
戦争や核兵器は、人々の暮らしだけでなく、健康や命そのものを奪います。
「戦争は最大の健康被害」「平和は最大の公衆衛生」「核戦争は究極の暴力」という言葉が強く印象に残りました。
受け継ぐこと、声を上げること
2024年日本被団協がノーベル平和賞を受賞したことで、改めて平和への願いに世界の注目が集まり、私も核兵器のない世界の実現のために改めて学びたいと思い、今回参加させていただきました。
平和とは、戦争がないことだけではありません。
安心して医療を受け、家族や友人と笑顔で暮らせる毎日があることも平和です。その当たり前の日常は決して当たり前ではありません。
広島の街を歩き、被爆樹木を見て、呉の軍事施設を目の前にし、そして多くの人の平和への思いに触れたことで、平和は「誰かが守ってくれるもの」ではなく、一人ひとりが関心をもち、学び、考え続けることで未来へとつながっていくものなのだと感じました。
今回の経験が、皆さんにとっても平和について考える小さなきっかけになれば幸いです。
広島で見たもの、聞いたこと、
感じたことを忘れずに。
平和な日常と、かけがえのない「いのち」を守るために、
これからも考え続け、行動していきたいと思います。



