みみぞう文庫 本の紹介
~カラフルな社会で生きよう~
「学校では教えてくれない差別と排除の話」
みみはら高砂クリニック
課長 阪口 政雄
先日、人気のハンバーガーチェーン店でベトナム人従業員がお店の外国人の幹部を育成するという方針の下に在留資格「特定技能」制度を使って、店長を目指しているというニュースが報道されたことをご存じでしょうか。
記事によると、そのベトナム人従業員の方はキャリアアップのため日々大変な努力をしていて、お客さんが笑顔で『ごちそうさま』『おいしかったよ』と言って帰られることに喜び、やりがいを感じているとのことでした。
言葉、文化の壁を乗り越えて外国人の方がやりがいのある仕事でキャリアアップを目指している、とても素晴らしいことだと思いますが、驚いたことにそのチェーン店に対して「幹部がベトナム人ではイメージ崩壊」「日本人を優先しろ」「売国」と批判が殺到し、不買運動まで起こりました。過激なインフルエンサーに扇動されてヒートアップした批判の中には、在日外国人そのものへの差別的な言葉もありました。本当にひどい話だと思います。
私たちのクリニックがある堺市はベトナムとは16世紀の御朱印船貿易時代から、中世を通じて親密な交流の歴史を持っており、約400年前から経済・文化の絆があります。今でもたくさんのベトナム人の方が堺市に住んでいます。私たちはすでに同じ社会で暮らしており、これからも共に暮らしていくでしょう。

排外的な主張が飛び交う社会で共生社会を作っていくために私たちはどうすべきなのか?
そこで一冊の本を紹介したいと思います。
先日、私たちが所属する大阪民医連の学術運動交流集会(※1)で講演していただいたジャーナリスト安田浩一氏の「学校では教えてくれない差別と排除の話」です。
(※1)大阪府下のすべての民医連事業所が参加し、医療・介護の実践、社会保障運動、平和活動など、様々な演題発表を通してお互いに学びを深める集会です。
「地震と虐殺1923-2024」で第68回JCJ賞大賞を受賞した著者が外国人労働者、ヘイトスピーチ、沖縄という現代日本の差別と排除の問題について、現場での取材を元に分かりやすく語った作品です。

著者:安田 浩一
(フリージャーナリスト、非正規雇用・外国人労働者・ヘイトスピーチ・ネット右翼など人権と差別を中心に取材・執筆。「地震と虐殺1923-2024」で2025年9月27日第68回JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞大賞を受賞)
イラスト:金井 真紀
(イラスト:金井 真紀イラストレーター、テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て、2015年より文筆家・イラストレーターとして活動)
労働問題をテーマとしてフリージャーナリストの活動を始めた著者は外国人研修制度問題の取材で岐阜県の縫製工場を訪れます。その際に実習生の若い中国人女性たちが指定してきたのは午前一時、仕事が午前一時にならないと終わらないからです。さらに著者が驚いたのは暖房が使われていない寮で彼女たちがダウンジャケットを着たまま生活をしていることです。そして彼女たちの時給が300円、休日は月に1度あるかないかという劣悪な環境に置かれているという実態を知ります。
著者は憤りを覚えながら外国人研修制度の取材を進めるうちに、この問題の根っこに日本人による日本人以外のアジア人に対する差別の問題があると気づきます。

外国人労働者の問題を取っ掛かりに著者は、街中やネットで行われるヘイトスピーチ(人種、民族、国籍、性などのマイノリティに対して向けられる差別的な攻撃)の問題、そして沖縄への差別の問題について今までの取材を基に語ります。
その中で印象的なのは2013年に東京・銀座で行われた沖縄県内の四十一市町村の首長らが参加したパレードのエピソードです。国土の6%しかない沖縄に、なぜ全国の70%を超える米軍専用施設を押し付けるのか?という訴えのパレードに対して、排外主義的な主張を掲げるグループが集結し、沖縄の人たちを「売国奴」「中国人のスパイ」と罵ったのです。当時、自民党に属していた翁長雄志那覇市長(当時)はこのパレードのできごとをきっかけに辺野古への基地移転に反対するようになります。そしてその原因は排外主義グループではなく、沖縄の人たちを罵る彼らを見て見ぬふりをしていた沿道の人たち、沖縄に無関心な人たちだったのです。

『差別や排除とどう向きあえばよいのか』のパートで著者は「多くの場合、差別や排除は無知と誤解から生じる」とし、「いろ
いろな文化と出会い、さまざまな地域を歩く、すると風景の彩りが豊かになる」「差別する集団はいわばモノクロの集団」「人と人を分断するような楽しみよりも、人と人とがお互いに理解しあい、吸収しあう方がよほど楽しみの度合いが大きい」と彩りのある共生の社会の方が楽しいよと訴えます。

金井真紀さんのカラフルで素敵なイラストが表紙のカラフルで楽しい多文化共生の社会を作っていくためのヒントが込められた本作、美味しいバインミーでも食べながら、ぜひ読んでください。
これがベトナムサンドイッチのバインミー!パクチーたっぷり!
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