特定健診

これらの生活習慣病は個々の原因で発症するというよりも、肥満、特に内臓に脂肪が蓄積した肥満が犯人であると考えられています。 内臓脂肪蓄積により、さまざまな病気が引き起こされた状態をメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)とよび、注目されています。
当サイトでは国のメタボリックシンドローム対策の柱として、企業の健康保険組合や国民健康保険を運営する市区町村などに採用が義務づけられた特定健康診査を解説しています。
この特定健康診査は、糖尿病や高脂血症、高尿酸血症などの生活習慣病の発症や重症化を予防することを目的として、メタボリックシンドローム(※)に着目し、この該当者及び予備群を減少させるための特定保健指導を必要とする者を、的確に抽出するために行うものです。
メタボに特化した検査項目 |
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1.問診(生活習慣、行動習慣) |
2.診察(理学的所見) |
3.身体計測(身長、体重、腹囲、肥満度、BMI) |
4.血圧測定 |
5.血液検査(中性脂肪、HDL・LDLコレステロール、GOT・GPT、γ-GTP、血糖、HbA1c) |
6.尿糖、尿タンパクの有無の検査 |
7.医師の判断で選択的に実施する項目心電図、貧血検査、眼底検査 |
検査内容は上記の通りです。
従来の健診との比較では、腹囲が追加されており、男性が85cm以上、女性が90cm以上の場合、メタボリックシンドロームの基本要件を充たすこととなります。
血液検査では、LDLコレステロール、HbA1c(グリコヘモグロビン)が必須項目として新たに追加され、総コレステロールが削除されています。胸部X線や喀痰検査が削除され、メタボに特化している点も注目されます。
従来の健診では、医療機関ごとに検査法、検査機器、試薬などの違いにより、基準値や健診判定値の違いがあるため、異なる健診機関のデータを比較することが出来ませんでした。
しかし、この特定健康診査では実施した健診機関を問わず保険者はデータを一元管理し、リスクの高いものから優先的に保健指導を行うことが求められており、検査測定値の標準化を行うことが出来るようになっています。
特定保健指導の内容は、受診者の状態に応じて、対面や電話、電子メールによる動機づけ支援(原則1回の指導)、積極的支援(3ヶ月から6ヶ月の継続的な指導)となっています。
STEP1
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腹囲とBMIで内臓脂肪蓄積のリスクを判定腹囲:男性は85cm以上、女性は90cm以上 → (1) |
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STEP2
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薬物治療1.血糖空腹時血糖値が100mg/dl以上またはHbAicが5.2%以上または薬物治療中 |
STEP3
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ステップ1、2から対象者をグループ分け(1)の場合:1~4のうち、2つ以上該当で「積極的支援」、1つは「動機づけ支援」を行う。 |
STEP4
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よりよい生活のために65歳以上75歳未満の場合は、積極的支援の対象でも動機づけ支援とする。 |

内臓脂肪が増加すると、血液中に分泌される中性脂肪とLDL(悪玉)コレステロールが増加し、逆にHDL(善玉)コレステロールが減少しやすくなります。
また、内臓脂肪が増加するとアディポサイトカインと呼ばれる物質が異常に分泌されます。アディポサイトカインには、体に良い作用をするものと、悪い作用をするものがありますが、内臓脂肪が増えると悪い作用をするタイプが増えてしまいます。
そのため、インスリンの働きが低下して血糖値が高くなったり、動脈の傷の修復を妨げたり、血圧を上昇させたり、血栓ができやすくなるなど、動脈硬化を進行させてしまうのです。
医師から「メタボ」と診断されても、必ずしもそれが治療の要する病気であるということではありません。勿論、血糖値、LDLコレステロール、中性脂肪、血圧が基準値を超えていれば、糖尿病、資質異常症、高血圧などの病気ですので、医師の判断に従って、必要あれば治療を受けることになります。
特に治療が必要でないと診断されても、それは病気の一歩手前の段階にあると認識すべきです。病気でなくても、食事の改善、適度な運動、ストレスの解消などによる生活習慣の改善に努めなければ、動脈硬化を進行させて血管の老化を早め、近いうちに生活習慣病となるからです。
メタボは互いに関連しており、どんな順番で発生するかも解明されています。これを捉えたのが「メタボリックドミノ」という考え方です。肥満から高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、動脈硬化が連鎖的に起こり、最終的には心筋梗塞や脳梗塞のような脳・心血管系の病気で倒れるまでの流れが、ドミノ倒しに似ていることからこのように命名されました。
そのまま放置してドミノ倒しが進んでしまうと、コマが1つ倒れるたびにいろんなコマが同時に倒れて手が打ちにくくなります。診断基準以下だからと安心しないで、普段から肥満に気をつけるなど、自分の立ち位置を常に意識しましょう。