救急総合診療科部長の藤本です。

先日,喀痰のグラム染色で「太い緑膿菌」に出会いました。当科で経験した気管支拡張症の患者さんで見られたムコイド型緑膿菌です(図1)。長年にわたって慢性に膿性痰を喀出している患者さんで,喀痰を培養すると常に緑膿菌が分離されます。

図1:太い緑膿菌(ムコイド(+))

 私はこれまで「緑膿菌はGNR-small(slender)= 細い!」と思っていましたが,この患者さんの緑膿菌(図1)は腸内細菌を思わせるほどの太さがあり,ぷりぷりした感じです。ムコイド型緑膿菌なので周囲に淡い橙褐色の層を伴っています。別の患者さんの喀痰から得られたムコイド型緑膿菌のグラム染色像を図2に示します。まさにsmall(slender)= ほっそりとしています。図3は,さらに別の患者さんの喀痰で見られたムコイドを産生しない緑膿菌のグラム染色像です。典型的に small(slender)です。

図2:細い緑膿菌(ムコイド(+))

図3:細い緑膿菌(ムコイド(-))

グラム陰性桿菌の太さを判断するとき,迷うことはたしかにあるのですが,私がこれまで見てきた緑膿菌の横幅は図2,図3のようにほっそりしたものでした。今回,初めて腸内細菌と区別できないほどに太い緑膿菌に出会ったというわけです。(なお図1~3はすべてハッカー変法(クリスタルバイオレット → ルゴール → エタノール → サフラニン液)で染めました。)

少し調べてみました。Mandell(8th ed.)にはグラム陰性桿菌の染色像について極めて簡単な記述しかありませんでした。「つれない」と思ってしまうほどです。緑膿菌については「0.5~1.0μm in width」と記載され,腸内細菌は一くくりで「0.5μm in diameter」とあります。意外にも両者の横幅に差異があるとの記述はないのです。沖縄県立中部病院出身の谷口智宏先生が執筆された「感染症ケースファイル p.74,医学書院,2011年」を読み返してみました。緑膿菌について「小さく細いグラム陰性桿菌に染まることが多く,,(中略)。ただし,検体によっては大腸菌やKlebsiellaなどと鑑別が難しいことも少なくない。」と書かれています。

今回の経験を経て「少なくともムコイド型緑膿菌においては腸内細菌と同等に太く見える場合がある」と認識を改めました。これからも注意深く観察を続けてゆきたいと思います。ところで,先日(7月30日)当院で開催された「GP+1セミナー」での山本剛先生(西神戸医療センター)のご講演の際,フロアーから私が「緑膿菌は細いです。太いのは見たことがありません。」と断言してしまいました(!)が,この場を借りて訂正させていただきます。