ドクター松葉のぴりからコラム

ALIVE
耳原高石診療所
所長 松葉 和己


 昨年、二〇一五年は、日本の歴史の分岐点になる重要な年でした。独裁政権は、多くの国民の声を無視し、憲法も無視し、アメリカ軍と行動を共にし、地球の果てまで軍隊を送る暴挙を決定してしまいました。
 安保関連だけではありません。日本では安定した雇用が崩壊しています。使い捨ての派遣労働が増え、雇用形態の違いにより、身分社会ができています(森岡孝二著「雇用身分社会」岩波新書)。十五歳から二四歳の若者の非正規比率は急激に高まり、今や五十%が非正規雇用者になっています。非正規雇用の若者には、低賃金で昇給の可能性がないのみならず、家庭を持ったり教育を受けたりする機会から阻害され、病気になっても医療機関を受診することすらできません。かつての「女工哀史」が今は「ワーキングプア」になっています。
 TPP締結により、日本の優れた国民皆保険制度が、多国籍企業の超富裕層の餌食になる可能性が高くなりました。大手企業群と金融業界は、もはや国家や政府まで買収するほどの力を持ってしまいました。彼らが狙うのは、一〇〇兆円規模の日本の医療・介護ビジネスです(堤未果著「沈みゆく大国アメリカ・逃げ切れ!日本の医療」集英社新書)。
「いまの日本は、国民皆保険制度をはじめ、貴いものをないがしろにして外国に安く売り飛ばすような、間違った方向に進んでいます」
 そう語るのは、昨年で医師を辞め国民を啓発する仕事に専念することにしたという福島県出身の本田宏医師です。「普通の人々の無関心が、放っておけば国を滅ぼしてしまう」とも言っています。
 昨年のSEALDsなど、若者による新しい運動が注目と期待を集めていますが、すぐに結果が出るほど甘くはない。今は、深く静かに一人でも二人でも同志を募る努力を継続するべきでしょう。
 昨年八月末、Mr・Childrenがコンサートで演奏したALIVEという曲に感動し、以後毎日のようにCDで聞いています。彼らが政治的メッセージを表現することは滅多にないのですが、この曲は違っていた。人が一人二人と集まってゆき、やがて大集団となる映像と共に流されたこの曲を聴くと、若者よ、深く静かに団結せよという意図を強く感じます。
〈夢はなくとも希望はなくとも /目の前の遥かな道を/やがて荒野に花は咲くだろう/あらゆる国境線を越え〉
 社会がどうであろうと、地に足をつけて、これまで通り、地域で生きて暮らしている人たちと共に闘っていきたいと思います。

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