ドクター松葉のぴりからコラム

「子宮頸がんワクチン事件」
耳原高石診療所
所長 松葉 和己


 さいとう・たかお。といっても、ゴルゴ13の作者ではありません。格差社会や政府に対する厳しい批判が持ち味のジャーナリストです。
 その斎藤貴男氏による表記の単行本を、興味深く読みました(集英社二〇一五年四月二九日発行)。
 ワクチンに、ある程度の副反応はつきものだ、しかし国民全体の利益のほうがはるかに大きいので、微々たる副反応の発生には目をつぶるべきだ、というのがそれまでの私の考え方でした。しかし、この本に登場するワクチン禍の被害者のルポルタージュは衝撃的でした。
 北海道美唄市に住む高校一年生だったSさんは、市の保健センターからの「必ず接種をしてください」という通知を受け、HPVワクチンの接種を受けたところ、十五分ほどで異変が起きました。意識が突然なくなったり、四十度の高熱、脱力と不随意運動など、すさまじい症状に襲われました。知的レベルが低下し、ワクチンを受ける前は普通の生徒だったSさんは、重度の知的障害者になってしまいました。
 子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルスの感染であり、HPVワクチンを接種することにより子宮頸がんの発症を予防できると言われています。一方、HPVワクチンによる重篤な副反応が出る確率は、0・00六%ぐらいと報告されています。
 ワクチンの普及により将来子宮頸がんの発症が減ったとしても、人生を台無しにされてしまった中学、高校生がいるという現状をどう見るか。
 斎藤氏の視点は、常に被害者の側にあります。そして高い所から物を言う権力者の姿勢に激しく反発します。斎藤氏の他の著書、例えば「機会不平等」(文藝春秋社)などをぜひお読みください。

Dr松葉のぴりからコラム