ドクター松葉のぴりからコラム

心のゆとり
耳原高石診療所
所長 松葉 和己


 アメリカ合衆国大統領は、おそらく世界一忙しい職業でしょう。アメリカ国内だけではなく、全世界の人間に向けて、強い自信のあるメッセージを発信しなくてはなりません。
 ご承知のようにアメリカは二大政党制の国で、共和党と民主党の間で四年ごとに政権を争ってきました。最近では、クリントンやオバマの民主党の方が優勢のようですが、共和党の中では、レーガン大統領が、人心を掌握する力強さの点で、際立った存在感がありました。
 一九八一年三月、レーガン大統領暗殺未遂事件というのが起こりました。犯人の撃った銃の弾丸は、大統領の胸に命中し、心臓をかすめて左肺の奥深くで止まりました。大学病院に搬送された大統領が緊急手術を受ける直前、意識は清明でした。レーガンは、手術に望む執刀医に向かって言いました。
「あなた方がみな共和党員だといいんだがねぇ」
 執刀医は実は民主党員だったのですが、こう言い返しました。
「大統領、ご安心ください。今日一日、われわれはみな共和党員です」
 アメリカ合衆国大統領の命が危ないという危機の際に見せた、レーガンのこのユーモアの精神は、世界の指導者のあるべき姿を体現したとして、後に称賛され、レーガンの支持率アップにつながりました。
 元映画俳優だったレーガンなら、これぐらいは言うだろうとも思いますが、執刀医の返答がまた、最高でした。この外科医は、おそらくふだんから、心にゆとりがある人だったのでしょう。
 どんな厳しい状況にあっても自己を客観視できる能力、そして、人生の辛苦をさんざん味わってきた経験。そういうものが、心のゆとりを生むのでしょう。

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