ドクター松葉のぴりからコラム

社会脳からみた認知症
耳原高石診療所
所長 松葉 和己


 二〇一三年三月号と四月号の二回に分け、当コラムで伊古田俊夫先生が書かれた、講談社ブルーバックス「脳からみた認知症」を紹介しました。伊古田先生は、私たちと同じ民医連の北海道勤医協中央病院の元院長で、現在は、札幌市認知症支援事業推進委員長です。
 その伊古田先生が、このたび講談社ブルーバックスの続編として「社会脳からみた認知症・徴候を見抜き、重症化をくい止める」を出されました。たいへんな力作で、認知症の最新の知見が書かれていますので、ぜひお読みください。
 「些細なことですぐに怒り出す、人を無視する、人の気持ちがわからない」といった症状は、認知症の人ではよく見られます。これまで、そのような症状は、本人の性格のせい、にされがちでした。しかし、最近の研究では、介護者泣かせのそのような行動の背後に、脳の病変がひそんでいることがわかってきました。
 認知症では、社会的認知が壊れるのです。社会的認知とは、社会および社会の人々の情報をうまくキャッチし理解すること、そして、周りの人々とうまくやってゆく社会的能力です。
 例えば、他人の心の痛みを自分の心の痛みとして感じる、共感と同情の能力や、自己の感情を適切に抑制する、理性的抑制の能力、また、自分を振り返り反省する、自己の認識、自己モニタリングの能力などです。
 このような社会的認知の活動を主に担う脳の領域が「社会脳」です。社会脳が損傷すると、社会の中でうまく生きてゆくことができなくなる。これが認知症の本質だと、伊古田先生は言います。  実際に、新しい認知症の診断基準には、社会的認知の障害も含まれるようになっています。

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