ドクター松葉のぴりからコラム

エボラ
耳原高石診療所
所長 松葉 和己


 沖縄県沖縄市に住んでいる六十歳代男性が、仕事の関係で十ヶ月間、西アフリカのリベリアに滞在し、最近日本に帰国しました。帰国後十日目に発熱あり。男性は、高血圧症で通院中だったかかりつけ医を受診し、抗菌薬が処方されました。しかし、症状が悪化したため、帰国後十三日目に民間病院である中頭病院の時間外の外来を受診。
 受診時の体温は三七度六分。経皮酸素飽和度(九五%以上が正常)が九三%と低下。呼吸数が一分間四○回で努力様呼吸を呈していました。WHOリポートにあるエボラ出血熱特有の嘔吐、下痢、腹痛はなし。
 中頭病院の当直医が病歴を聴取し、男性のリベリア滞在歴が始めて判明しました。男性は一般的な個室に移されましたが、接触感染対策のための個人用防護具は装着しませんでした。当直医は熱帯熱マラリアを疑い、血液塗抹標本のギムザ染色を行う。その結果、熱帯熱マラリアの原虫が確認されました。男性はマラリアの治療ができる地域拠点病院へ転送されました。
 この症例は、重大な問題点を浮き彫りにしました。男性患者は、結果的にエボラでなくマラリアでしたが、リベリアから帰国後十日目での発熱は、エボラが疑われます。ところが、かかりつけ医と中頭病院では個人用防護具を使わず、血液検体も素手で扱っています。仮にエボラであったとすれば、問診をとる以前に受付の事務員さんが、高い感染リスクにさらされたでしょう。
 沖縄県沖縄市を大阪府高石市に置き換えればどうでしょうか。人ごとではありません。
 国は、西アフリカの流行国から帰国後一ヶ月以内での発熱の場合、一般の医療機関の受診は避けるように呼びかけています。国民の協力が不可欠です。

Dr松葉のぴりからコラム