ドクター松葉のぴりからコラム

共感的姿勢
耳原高石診療所
所長 松葉 和己


 私が医学生だったころ、というのは一九七〇年代のことですが、医学部の教育内容に、「患者の話を聞く技術」や「医療面接技法」などはありませんでした。臨床医として面接の重要性を学んだのは、卒業後のことです。
 その点、最近の医学教育は、面接の技術をしっかりと教えているようですので、頼もしく思います。我々のような昔の医者とは違い、今の若手医師の世代は、患者さんや患者のご家族さんとのコミュニケーション能力が、格段に向上しています。
 なにしろ、若手医師は、言葉そのものが明瞭に発音されることが多い。昔なら、医師が何も言わなくても、あるいは「むにゃむにゃ」と意味不明なことを言っていても医療が成立していましたが、今はそうはいかない。病状について、治療方針について、明確に患者さんに説明する必要がある。そういう意味では、今の医師のほうが大変かもしれません。
 今の医学生は、「患者さんに共感的姿勢を持つ」ように教えられています。それは、単に同情することではありません。医療人としての共感的姿勢とは、科学的、客観的に患者さんの症状を分析するための作業、方法なのです。
 例えば「胸がものすごく痛い」という症状。「それは大変でしたね」で終わるのは同情。共感的姿勢では、いつから痛いのか、どのような痛さなのかなどを尋ねると同時に、患者さんの背景を探りながら、痛みの原因を患者さんといっしょに考えていきます。
 そうはいっても、ここぞとばかり症状を捲くし立てるような患者さんの場合、共感するにも限度があるのは事実です。今の若手医師は、忍耐力も持たなくてはいけません。大変です。

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