ドクター松葉のぴりからコラム

「オランダの飢餓」 その二
耳原高石診療所
所長 松葉 和己


 前回は、オランダで飢餓状態にあった母親から生まれた子供が大人になると肥満や糖尿病になっていたというお話をしました。
 子宮の中にいる胎児は、母親の臍帯(へその緒)を通して外部環境を推し量ります。母体からの栄養が悪いと、「食べ物の少ないところにいるのだなあ」と思います。そして、栄養が少なくても生きてゆけるように自分の体のしくみを変化させ、栄養を取り込みやすい体になります。胎児期の体の変化は、生後の環境が変わってもそのまま維持されます。その結果、大人になると肥満や糖尿病になってしまうのです。
 人間は、なぜ十ヶ月もの長い間子宮の中にいるのか。それは、母親の臍帯を通して外部環境を学んでいる期間なのです。いざ外に出る時に備えて外部環境に適応できる体を作っているのです。
 終戦前後の日本人も飢餓状態にありました。昭和二十年生まれの人は、今年で満六十九歳になるはずです。ほとんどの母親は飢餓状態にあった。その子供ですので、生活習慣病になりやすいのは当然のことと言えます。
 現在の日本に戻ります。戦後、日本人の体格は良くなりましたが、二十代と三十代の女性だけは、終戦直後よりも「やせ」の人が多いと言われています。妊娠可能年齢の女性がやせていると、低出生体重児が多くなります。先進国の中で日本だけが低出生体重児の割合が増加している国です。中国の八倍もあります。
 極端にやせた現在の母親から生まれた子供が成人になった世界を想像するとぞっとします。今以上に糖尿病が蔓延しているでしょう。若い女性の「やせ願望」は亡国の元かもしれません。


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