ドクター松葉のぴりからコラム

問題は大きく深い
耳原高石診療所
所長 松葉 和己


 ディオバンは、外資系製薬会社のノバルティス ファーマ社(以下、ノバ社)が販売した降圧剤で、私もよく処方します。新聞などで大きく取り上げられていますが、事の本質がどこにあるのか、わかりにくいかもしれません。
 最初に、ディオバン自体はよく効く優秀な薬で、副作用も少なく、まったく問題がない薬であることを強調したいと思います。
 問題は、ディオバンを使って、京都府立医大や慈恵医大などの医師達が行った臨床研究にあります。研究の目的は、ディオバンが他の降圧剤と違って心筋梗塞や脳卒中を防ぐ力を持っていることを立証することでした。この研究にノバ社の社員が深く関わっていました。
 ノバ社の社員が行った不正の手口はこうです。ディオバンを服用している患者さんと、ディオバン以外の薬を服用している患者さんの、それぞれ千五百人ずつを比較する研究で、この社員は、ディオバン服用群で、実際よりも心筋梗塞や脳卒中の発生数を少なく改ざんし、ディオバン以外の薬服用群では、逆に実際よりも多く発生したように見せかけたのです。
 ノバ社は、このインチキな研究成果を主に医師相手の宣伝材料に利用し、○五年以降、ディオバンだけで毎年一千億円以上の売り上げをあげました。ノバ社は、研究費という名目で京都府立医大に三億八千万円、慈恵医大に一億八千万円を寄付していますが、ディオバンの売上額を見れば、それぐらい微々たるものです。
 研究者の論文捏造事件なら、過去にもいくつかありました。しかし、今回は、企業の営利主義が関係した大きく深い問題のように思います。

Dr松葉のぴりからコラム