ドクター松葉のぴりからコラム

美しき停滞
耳原高石診療所
所長 松葉 和己


 司馬遼太郎原作の「坂の上の雲」が、年末に三年にわたってNHKで放送されたことがありました。第一回目の放送が終わった翌年の大河ドラマが「龍馬伝」でした。それ以来、日曜の夜八時には大河ドラマを見るためにテレビの前に座るようになりました。
 時代背景を頭に入れておくとドラマがよくわかるので、このところ日本の歴史を勉強するようになりました。最もドラマチックに歴史が動いた時期は、やはり幕末から明治初期でしょう。
 あの頃の日本人には活力がありました。黒船来航から大政奉還、さらに文明開化、殖産興業と続く激動と変革の時代。「坂の上の雲」にあるように、上をのみ見て歩く時代でした。今年の大河ドラマがまさにその時代を描くようなので、楽しみです。
 ひるがえって平成二十五年の日本はどうでしょう。不況と失業者の増加は底知らず。若者に仕事がないのが、私たちの世代として気の毒でなりません。
 日本の国力は落ちる一方なのかもしれません。幕末、明治初期に比べても当然ですが、敗戦後の自信喪失の時代と比べても、若者に活気が感じられない。
 司馬遼太郎は、井上ひさし氏との対談の中でこう述べています。
「日本のいわゆる発展は終わりで、あとはよき停滞、美しき停滞をできるかどうか」  
一心不乱にケータイに向かっている若者を見ると、停滞というより渋滞というべきかもしれません。心では動きたいと思っていても、上がつかえて動けない。
 ここは、年長者が叱咤激励しなければなりません。たとえば「ヴィジョン、アンド、ハードワーク(山中伸弥教授)」と。

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