ドクター松葉のぴりからコラム

胃瘻(いろう)
耳原高石診療所
所長 松葉 和己


 胃瘻は、人工栄養の一種です。みぞおちの腹壁に穴を開け、胃の中に直接チューブを入れる方法が胃瘻です。初めて胃瘻チューブを作った当初は、胃の壁を腹壁に固定させるために、胃を糸で持ち上げて腹壁にしっかりとくっつけておきますが、しばらくすると胃が腹壁に癒着して、お腹の皮から胃の中に抜ける堅いトンネルが完成します。
 最近では、胃瘻ボタンといって、三センチぐらいの長さのチューブをよく使います。腹壁外に出ているボタン状の装置を開け閉めして、栄養剤を注入します。在宅で介護者が処置しやすいようになっています。
 現在、国内の胃瘻造設者は約二十六万人。もともとは神経難病や頭頸部癌の患者の栄養管理の目的に使用されていましたが、最近では、どんな病気の人でも、入院後、口から食べ物が摂れなくなったら、気軽に造設される傾向にあります。
 日本老年医学会という医師の団体が、昨年十二月、胃瘻を導入するかどうか決定する際の提言を示しました。それによると、胃瘻を導入しないことも選択肢として示した上で、患者自身や家族の価値観や死生観を尊重し、最善の決定を目指すべきだとしています。
 患者さんやご家族さんに、「胃瘻をしない」という選択肢を示すことは、従来タブー視されていたことを考えると、相当に大胆な提言と言えます。
 胃瘻は、確かに介護する者にとっては便利で、誤嚥性肺炎のリスクが少なくなるというメリットがあります。一方で、患者さん本人にとって、そこまでして生きることが最善と言えるかどうか。慎重に考える必要があるでしょう。

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