ドクター松葉のぴりからコラム

医学がわかるのは、ほんの一部
耳原高石診療所
所長 松葉 和己


 現在の医学をもってしても、病気が解明されたのは、ほんの一部だけだと常々思います。例えば、疲労という現象。よく「疲れると風邪をひきやすい」と言いますが、人が疲れるとどうなるのか、何か疲労に関係した物質が出るのか、なぜそれが風邪ひきにつながるのか、などについては、ほとんど解明されていません。
 同じようにストレスという言葉。一般的には非常によく使われますが、ストレスというのは医学用語ではありません。「精神的ストレスが原因で心筋梗塞になった」などという表現は、医学論文の世界には登場しません。数字で表せない、情緒的な概念は、医学が不得手な分野なのです。
 疲労にしてもストレスにしても、その量や程度を数字で表すことができません。「今日の仕事の疲労度は二〇〇で、ストレス量は三〇〇でした」などと言う
 ことは不可能です。定量化できないので、医学になじまないとも言えます。定量化できなければ研究の対象になりにくい。従って、「疲労と風邪との関係」や「精神的ストレスと心筋梗塞との関係」についての研究は、論文の書きようがないのです。
 一方、一般常識の世界では、疲労やストレスは、誰もが経験し日常的に非常によく使われる言葉です。このように医学といっても、すべての病気や病態をわかっているわけではなく、全部お見通しといった偉そうなことは決して言えません。
 よく「何でこんな病気になったのでしょう」という質問を受けますが、医学的にお答えできるのは、ほんの一部と思ってください。

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