ドクター松葉のぴりからコラム

人生の扉
耳原高石診療所
所長 松葉 和己


 我が家から自転車で十分少々走れば、大仙公園に着きます。春には桜が咲き、秋には黄色や朱色の紅葉が眺められます。雨が降らないかぎり金曜日には自転車で必ず通るのですが、毎年十一月下旬の紅葉の季節が最も楽しみです。朝日を浴びる木々もさわやかですし、夕日に映える木々もまた、心が洗われる気がします。世界とは何ときれいなものなのだろうと、身近にある自然に見入ってしまいます。
 思えばもう二十年以上、この紅葉を眺めてきたことになります。この二十年間、いろんなことがありました。日本ではバブルが崩壊し、不況、産業空洞化、格差社会、無縁社会と、先が見えない閉塞感が漂っています。自分もこの先どうなるかわからないし、あと何年、この素晴らしい紅葉を眺めることができるだろうかと、一日一日、一秒一秒をいとおしむ気持ちになります。
そんなときに思い出す曲があります。
 竹内まりやの『人生の扉』
〈春がまた来るたび/ひとつ年を重ね/目に映る景色も/少しずつ変わるよ〉
 竹内まりやさんは、五十歳を過ぎてからこの曲を作ったそうです。満開の桜や色鮮やかな紅葉を見るたびに、この景色をあと何度見られるだろうという感慨に浸るといいます。
〈信じられない速さで/時は過ぎ去ると/知ってしまったら/どんな小さなことも/覚えていたいと/心が言ったよ〉
 出雲大社の境内の近くにある竹内まりやさんの実家を訪れたことがあります。ひっそりと佇むその旅館は、日々の喧騒を忘れさせてくれます。
〈ひとつひとつ/人生の扉を開けては/感じるその重さ/ひとりひとり/愛する人たちのために/生きてゆきたいよ〉
 人生の賛歌を素直に歌っている竹内まりやさんが、出雲大社の神様のように神々しく思えてきます。
〈長い旅路の果てに/輝く何かが/誰にでもあるさ〉
 そう。体が弱ってゆくのは、確かにつらいけれど、人生は思ったほど悪くはない。そう信じることにして、今年もまた人生の扉を開けてみましょう。



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