Good health for every child-how can you contribute?/ウメオ大学公衆衛生学教授アネリ先生のご講演

救急総合診療科の大矢です。

11月24日に当院のもと小児科部長で佛教大学教授武内一先生のご紹介で、スウェーデンのウメオ大学医学部疫学/公衆衛生学教授アネリ・イヴァルソン先生をお招きしました。
「Good health for every child-how can you contribute?」をテーマに、前半は小児科医として疫学研究に30年間取り組まれたセリアック病について、後半は現在取り組んでおられるChild public healthについてお話しいただきました。
お話の中で特に印象に残った点を報告します。

●セリアック病について
・アメリ先生が小児科医として働き出した当時セリアック病は遺伝疾患だと言われていたが、患者数の激増に気づいたことから疑問を抱き疫学研究に取り組むことになった。その中で母乳育児を行いながら少量から暴露を行っていくことで発症を防ぐことができることを見出した。このことはセリアック病の病態が詳細に解明される前のことで画期的な研究だった。
・セリアック病は思春期以降になると症状が全身倦怠感や抑うつなど非特異的になり診断が難しくなる。無症状の患者さんが多いが、診断がつきグルテンフリーの食事にして初めて体調が改善したと感じることができる患者もいる。
・東アジアは遺伝素因から患者は少ないと言われているが、正確な患者数は報告されていない。日本も小麦の摂取量が増えており増加していくことが予想されるため、可能性を考えておくことは重要。

●Child public health
・アフリカを中心に全世界で毎日17000人の5歳未満の子どもが亡くなっている。
・全世界で2億人を超える5歳未満の子どもたちが十分に成長できない環境で過ごしている。貧困をはじめ栄養や感染、家庭環境の不安など多くのリスクやストレスにさらされることで認知・運動・社会的感情の発達などに悪影響が及ぶ。そのため就学できてもその後の十分な成長に結びつかない。
Developmental potential in the first 5 years for children in developing countries Grantham-McGegor S, et al. Lancet 2007;369:60-70
・日本の子どもの貧困率は15%前後と高いが、近年スウェーデンでも上昇傾向にあり10%に迫ろうとしている。このことは問題だが、所得の再分配が日本よりも大きな規模で行われるため極端な貧困状態にはなりにくいシステムになっている。
・WHO・ユニセフ・世界銀行が共同で妊娠中から3歳までの養育の重要性についてFrameworkとしてまとめている(Nurturing care for early childhood development)。
・国連が提唱している持続可能な開発目標(SDGs)でも最初に「貧困をなくす」が掲げられている。

●スウェーデン社会について
・貧しい人の多い王国だった150年前から長い時間をかけて教育を重視して今の社会を作り上げてきた。
・学費は大学まで無料、医療費も原則無料。
・税金は高いが、このような国のシステムは党派を超えて支持されている。
・恵まれた環境で育った若者は歴史を知らずそのことを当たり前と思ってしまっていることが問題だと感じている。
・若者の中で肥満とメンタルヘルスが大きな健康問題になっている。社会の成熟と、プロテスタント信者が多いが文化的な宗教という意味合いが強いことも関与しているかもしれない。

これ以外にも知らないことやモチベーションが湧いてくるようなお話の連続で、1時間半があっという間に過ぎました。

お話を通じてグローバルな視点を意識することの大切さ、
日々の診療の中でも常に予防医学やヘルスプロモーションの視点を忘れないことの必要性を強く感じることができました。

貴重な機会を作って下さった武内先生、どうもありがとうございました。

胸部聴診のレクチャー

初期研修医1年目の山口諒也です。

11月15日の教育回診は、杉本先生によるでした。

普段なんとなくcrackleを探すために行っている聴診ですが、crackleにも時相や音質の違いがあったり、吸気と呼気の大きさが場所によって違ったり、音の聞こえやすさが逆に病的な状態を示していたりと、聴診の奥深さを知ることとなりました。

 

一度でいいから、聴診から予想した病態とCT所見がばっちり合っていた、という経験をしてみたいと思います。

最後に、ここで学んだ「肺区域覚える体操」をご紹介します。
「バレー→肘鉄→ひげダンス」。バレー→肘鉄→ひげダンス、です。
一度お試しください

中心静脈栄養施行時の血糖コントロールについて

救急総合診療科 杉本です。

昨日のGP+1カンファは糖尿病チームから、症例報告一例と当院の中心静脈栄養施行時の血糖コントロールについてのまとめでした。

症例発表はもともと血糖コントロール不良の高齢男性の重症肺炎でした。一般的に糖尿病あると感染症が重症化しやすいと言われますが、罹病期間が長期に渡る人は、HbA1cが8%であったとしても、免疫低下状態なんだそうで、HbA1cが悪い=感染悪化と思っていたのでびっくりしました。

一方、IVHについてです。内科で働いていると、栄養が取れない重症患者にIVHを行うことが多いですが、実際は当院で行なわれているIVHの半数はオペ後なんだそうです。普段は空腹時血糖200未満の人でも、IVH施行中は随時血糖400以上になることもあるようで、血糖管理が大事です。

当院では、まとめたことをきっかけに、IVH管理中は薬剤師から血糖測定いりませんか?と発信をするようになったとのことで、普段は個別の症例ばっかり見ていますか、まとめるってやっぱり大事だと感じさせられた報告でした。

学び多き、GP+1カンファレンス!

ER指導医の田端です。

Gp+1カンファレンスは、全診療科で参加するカンファレンスであり、私も出来る限り参加しています。11月7日のGp+1カンファレンスは初期研修医1年目の上角医師がプレゼンテーション担当で、「3週間の水様下痢と最近の粘血便を主訴とする生来健康な若年男性」でした。

この主訴だけで多くの医師は炎症性腸疾患を想起すると思います。実際に最終診断は潰瘍性大腸炎でしたのでfirst impression通りなのですが、上角医師の学びはsnap diagnosisにあるのではなく、「潰瘍性大腸炎を確定診断するには除外診断が必要」と言う点にありました。

診断基準は、「細菌性赤痢、アメーバ性大腸炎、サルモネラ腸炎、カンピロバクタ腸炎、大腸結核、クラミジア腸炎などの感染性腸炎が主体で、その他にクローン病、放射線照射性大腸炎、薬剤性大腸炎、リンパ濾胞増殖症、虚血性大腸炎、腸型ベーチェットなど」を除外すべきとしています。

そのため、上角医師は詳細な医療面接と大腸内視鏡に加えて、便細菌培養やT-spotなどの結核検査、便CD毒素や血清クラミジア抗体など、除外診断に必要な様々な情報を収集しました。その事が、「自分の学びになったし、皆に知っておいて欲しい事」になったのです。

「学び」について省察し、それを他者と共有する事はとても大切です。それを繰り返す事が、臨床医としての成長に結びつきます。上角医師のプレゼンテーションを見て、「着実に歩んでいるな」と嬉しくなりました。若い人が育ってゆくのを真近で見れるのは本当に幸せな事です。

 

彼らに負けず自分もまだまだ成長してゆきたい、そう思います。

アナフィラキシーと抗ヒスタミン剤

ER指導医の田端です。

ERでは毎週、経験の振り返り検討会を行っていますが、今日は「アナフィラキシーと抗ヒスタミン剤」について紹介します。

「アナフィラキシーに対して、H1ブロッカーとH2ブロッカーが静脈内投与されている事が多い」事が話題に登りました。
アナフィラキシーに対するH1ブロッカーは、かゆみと蕁麻疹には有効ですが、アナフィラキシーに使用するエビデンスはなく、アナフィラキシーの諸症状を改善しないとされています。H2ブロッカーは、H1ブロッカーとの併用において蕁麻疹をより軽減する可能性がありますが、これもアナフィラキシーに使用するエビデンスはなく、アナフィラキシーの諸症状を改善しないとされています。アナフィラキシーでは、肥満細胞や好塩基球からヒスタミンを始めとする各種ケミカルメディエーターが大量放出されるのに、抗ヒスタミン剤がアナフィラキシー自身に効果がないのは不思議な事です。

アナフィラキシーの20%では蕁麻疹が出現しません。アナフィラキシーに対してはやはり細胞外液輸液と酸素投与およびアドレナリン筋注です。α1アドレナリン受容体刺激では血管収縮と気道粘膜浮腫抑制が得られます。β1アドレナリン受容体刺激では心収縮力増大が得られます。β2アドレナリン受容体刺激では気管支拡張が得られるとともに、肥満細胞と好塩基球のcAMP産生を増加させて脱顆粒抑制をするためアナフィラキシー反応自身の軽減が得られます。

アナフィラキシーではまさしくABCの異常が出現するので、蕁麻疹対応の抗ヒスタミン剤についてあれこれ考えるよりも、もっとすべき事があります。ベストセラーになっている「研修医 当直御法度」に、「アナフィラキシーの軽症と中等症には、H1ブロッカーと必ずH2ブロッカーを投与する」と記載されているので、最初に必ず投与すべき薬剤として、初期研修医に少し誤って伝わっているのかも知れません。

救急外来とアナフィラキシーは切っても切れない関係です。時にオシッコちびりそうになりながら対応しています。抗菌薬、造影剤、鎮痛剤などで起こるので、どの診療科の医師でも初期対応が出来る必要のある病態ですね。

ISLSレクチャー

研修医2年目、難波です。
10/25のGP+1はISLSについてでした。
ISLS(Immediate Stroke Life Support、神経蘇生基礎研修法)とは、医療職(医師、看護師、救急隊員など)を対象とした脳卒中に対する神経救急対応学習のことです。
今回、1年目研修医2人がそれぞれ医師と患者に役割分担しロールプレイを行ってくれました(見事な演技でした!)それを見ながら、当院脳外科の田中先生がこのISLSについて講義してくださいました。

まず、primary survey として大まかな意識レベルとA(気道:発声できるか)、B(呼吸:呼吸数、SPO2)、C(循環:脈拍数、血圧)、D(脳ヘルニア兆候の確認:意識レベル、瞳孔異常、片麻痺の有無)、E(体温など環境)を把握します。もしこのABCDEに異常がある場合はその対応をまず行います。そして、次にsecondary surveyとして、問診、神経所見(NIHSS)、頭部CTなどを行います。

今回、NIHSSのとり方のコツや細かい意味を特に詳しく教えていただきました。NIHSSは腱反射など神経所見をすべて取らずに脳卒中に最低限必要な神経所見を短時間に取る方法であるとのことでした。そしてt-PA適応の指標のひとつになるだけでなく、経過を追う意味でも重要です。本来であれば15分ごとに測定すべきらしいです。

脳卒中診療は予防ももちろんですが、治療までの素早さが大事。
すばやく正確に、時間を無駄にしない脳卒中診療を実践していけるようがんばっていきます。

高山義浩先生が来られました!

救急総合診療科の大矢です。

10月19日に沖縄県立中部病院の高山義浩先生にお越しいただきレクチャーを行っていただきました。
機会を最大限に活かすために無理をお願いしての2本立てでした。
どちらも高山先生が経験された患者さんの物語が組み込まれた胸の熱くなるレクチャーでした。
金言だらけのレクチャーでしたが、特に多くの方に共有したい内容をまとめます。

Session1「在宅につなげる感染症診療の実際」
●感染症領域で心がけたい地域連携
・特別な感染管理を実施した患者さんについて、臨床情報を主治医と訪問看護へ適切に提供する。
多剤耐性菌の感受性情報(と推奨する抗菌薬)
病院において実施していた感染対策の内容
ケアマネなど介護関係者に主治医の頭越しに指示しない
・求めに応じて感染対策についてのアドバイスを行えるよう、相談しやすい関係を構築する。
いまのやり方に足し算、引き算でアドバイスを行う
できれば引き算が先。「相談すると楽になる」と思わせる
絶対にダメ出ししない。在宅ケアに敬意を払う
微妙なときは、早めに保健所を巻き込んでおく

●覚えておきたい在宅で使える抗菌薬
AMPC、AMPC/CVA、CEX、CTRX、TOB、LVFX、AZM、DOXY、CLDM、ST

●在宅療養を考慮する時の注意点
・在宅療養の適応があるかを確認する
本人や主介護者の不安に配慮する
不安定な要因があるなら無理に家に帰さない
在宅療養がよいという価値観を押し付けない
・必要な支援と役割分担を確認する
24時間の生活の流れをイメージする
医療と介護の役割分担を明確化する
急変時の対応を入念に打ち合わせる

●人生の最終段階における抗菌薬投与の差し控え
・抗菌薬の投与経路が確保できないとき
・安全に投与できる抗菌薬がみつからないとき
・抗菌薬を投与してもQOLの改善が期待できないとき
・微生物の感染による自覚症状を認めないとき

Session2「病院に求められる地域包括ケアとの連携」
●医療ケアの継続性のためのポイント
・薬剤調整と服薬管理
・栄養と摂食支援の確認
・社会的サポートの調整
・患者教育とACP

●10年後の地域医療にむけて

・自宅や高齢者施設における初期医療の重要性が高まる
地域医療は「病院完結型」から「地域完結型」へ
地域包括ケアシステムの構築が推進される
医療依存を高めたまま自宅や施設に暮らす人が増える
・生存より生活を優先させる医療の提案力が求められる
在宅医療を生活を病院化する「トロイの木馬」にしない
尊厳ある生き方についての社会的議論と足並みをそろえる
とくに、終末期における治療差し控えの合意形成力がカギ
・医療内容についてのアカウンタビリティが求められる
低リスクの人々が医療費の共同負担を拒否しはじめている
生活習慣病のコントロールなど責任ある態度が求められる
地域医療の質が定量的に評価され、比較されるようになる

全体を通じて僕自身に一番刺さったのは「SystemではなくCultureで高齢者を支える」という言葉でした。
今回のレクチャーがそんなCultureのある病院づくり、地域づくりのきっかけとなるように取り組んでいきたいと思います。
さらに詳しく知りたい方のために著書の写真もアップしてますので、
ぜひ手に取ってみて下さい。

高山先生、お忙しいところ本当にありがとうございました。

https://www.amazon.co.jp/%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E5…/…/4260028197

https://www.amazon.co.jp/%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8…/…/462130173X

「若年男性の肝腫大!腹水!」 さて鑑別は!? 

こんにちは。救急総合診療科の河村(裕)です。

先日のGP+1カンファレンスは、(自称)血液内科志望の消化器内科である河村(智)先生の発表でした。

「若年男性の肝腫大!腹水!」 さて鑑別は!? から始まり、研修医の先生達からはウイルス性やアルコール性の急性肝炎などが鑑別にあがりましたが、最終診断はなんと慢性好中球性白血病(CNL)であったという症例でした。

実は、来院時から4万を超える白血球増多があり、これがヒントになりました。著名な白血球増多を見たとき、感染症などの基礎疾患に伴う「類白血病反応」とみなされることが多いですが、今回は疑わしい基礎疾患は見つかりませんでした。

河トモ先生は当初から血液内科疾患のアンテナが立っていたようで、慢性骨髄性白血病(CML)を疑って骨髄検査や遺伝子検査を行うもCMLを疑う所見が全くでず・・・う〜ん、でもやっぱり造血器疾患が疑わしい!ということで最終的に血液内科へご紹介して診断に至りました。患者さんは無事に良くなられたとのことです。

CNLはマレな白血病で、CMLっぽいけれどもCMLの診断基準を満たさないことが、逆に、疑う所見になるのだそうです。

当院には血液内科がないため、早く・適切に疑って、タイミングを逃さず紹介することはとても重要なことだと改めて思いました。皆でそれをシェアできた素晴らしい発表でした!

高齢者の自己転倒と内因性疾患

ER指導医の田端です。
ERでは毎週、経験の振り返り検討会を行っています。
今日は「高齢者の自己転倒と内因性疾患」について紹介します。

初期研修医から、「高齢者外傷患者で実は肺炎を合併していたが、見逃してしまった」事例の振り返りがありました。
高齢者外傷は自己転倒が多いのですが、その場合の内因性疾患合併に関する研究は、あまりなされていません。

当院で行った少し古い研究ですが、2010年1月1日から12月31日まで自己転倒を主訴に受傷24時間以内に当院ERを受診した70歳以上の高齢者連続95例の検討では、1/3に内因性疾患の合併を認め、内因性疾患としては呼吸器感染症が最多でした。

内因性疾患関与群と非関与群との間で寄与因子を比較し、多変量解析した結果、「SpO2≦94%」が内因性疾患合併に対する独立した寄与因子となりました。

当院ERに受診する高齢者自己転倒患者のうち1/3に内因性疾患合併を認めたということは、私たちにとっては十分に認識しておくべき情報です。

個々の病院は立地や環境が異なりますから、自施設でのデータを臨床に役立ててゆくことが大切だと思います。

JVPについて(藤本卓司先生の教育回診)

こんにちは。西淀病院初期研修医1年目の内田です。今週から耳原での研修を開始しました。

 

10/11の藤本卓司先生の教育回診はJVPについてでした。

頸静脈を観察することで、脱水評価、右心負荷の評価ができます。
JVPは45度で約3.5〜4センチが正常であり、それをこえると溢水の可能性があります。


前日との変化でその日の体内水分量を測ることができます。
30度以下になると、頸静脈の拍動の先端が中にうもれてしまうのでうまく測定できなくなる可能性もあります。

そもそも頸静脈を探す方法ですが、橈骨動脈を触れながら、それと同時に脈うつのが頸動脈、そのとき一層性もしくは二層性に引っ込むのが頸静脈です。

大変勉強になり、楽しかったです!自分の病院に戻っても、JVPの診察を広めていけたらと思います!

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